障害年金における社会的治癒とは
1 社会的治癒
障害年金の受給の審査に関して、「社会的治癒」というものがあります。
怪我や病気が完治すれば医学的に治癒した、ということになります。
他方、傷病が治ったわけでなくとも、生活の状況を踏まえて、社会的に治癒したものと取り扱う、という判断を社会的治癒といいます。
2 社会的治癒が持つ意味
障害年金制度では、初診日の時点で国民年金に加入しているのか厚生年金に加入しているのかによって申請する障害年金の種類が変わってきます。
また、初診日時点を基準として、保険料納付の要件を満たしているかを判断することになります。
そのため、障害年金の申請においては、初診日の特定が極めて重要な位置づけとなっています。
ところが、証拠がなかなか集められず、初診日の特定が困難となることがあります。
十数年前に数回だけ通院し、その後何年も通院していない状況が続いた後で症状が急に悪化して通院を再開し、そこで障害年金を申請しようと考えたけれど、十数年前に通った病院の医療記録は既に破棄されている、というような場合等も少なくありません。
このような場合に、再開後の通院を初診日と扱う社会的治癒の意味が出てきます。
社会的治癒という概念は、基本的に、初診日についての例外的取扱いの1つとみることができます。
3 社会的治癒の認定
社会的治癒について、日数等明確な基準があるわけではありません。
そのため、以下は基準というより、大まかな目安となってきます。
⑴ 1つは通院状況です。症状が続いているからこそ治療を継続しているわけですので、一定期間していないという状態が社会的治癒の基本的な前提といえます。
完治しているか否かではなく、治療を継続する医学的な必要性がなくなっている状況が判断要素の1つとされます。
他方、ずっと通院をしていない事実だけをもって社会的治癒と認められるわけではありません。
⑵ 2つめは継続的な社会生活です。
障害年金は、特に傷病の労務への影響という視点もありますので、傷病が落ち着いており、就学や就労が一定程度継続できていたか、という事実も判断要素とされます。
⑶ 具体的な期間としては、おおむね5年程度、等と言われていますが、5年以内でも社会的治癒とされる事例、5年以上でも認められない事例もあるようです。
このあたりは、申請する傷病の性質や、期間中の社会生活の状況等の総合判断となっているためと思われます。
お役立ち情報
(目次)
- 障害年金の相談窓口
- 障害年金を受給するためのポイント
- 障害年金申請の必要書類
- 障害年金の不支給通知が届いた場合
- 障害年金における社会的治癒とは
- 障害年金の配偶者加算
- 働きながら障害年金を受給できる場合
- 障害年金の納付要件
- 障害年金と老齢年金の併給は可能か
- 学生でも障害年金の支給を受けられるか
- 障害年金の種類
- 障害年金と生活保護の関係
- 障害年金を受給することによるデメリット
- 障害年金の支給日
- フルタイムで仕事をしている場合の障害年金の受給
- 障害年金受給中に新たな障害が発症した場合の対応方法
- がんで障害年金が受け取れる場合
- 知的障害の場合の障害年金における初診日
- 精神疾患の障害年金の更新時の注意点
- リウマチで障害年金が受け取れる場合
- 糖尿病で障害年金が受け取れる場合
- 双極性障害で障害年金が受け取れる場合
- 失語症で障害年金を請求する場合のポイント
- メニエール病で障害年金を請求する場合のポイント
- ICDで障害年金が受け取れる場合
- 筋ジストロフィーで障害年金が受け取れる場合
- 眼の障害で障害年金が受け取れる場合
- 額改定請求について
- 障害年金が支給停止となるケース
- 有期認定と永久認定について
- 障害年金と障害者手帳の違い
- 特別障害者手当
- 障害者手帳について
- 障害者年金
- 社会保険労務士とは
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